第080号 新旧それぞれのよさ

 四国の松山市にいってきました。松山は学生時代に4年間を 
過ごした場所で、何年かぶりに訪問しました。 

ご存知の方もいると思いますが、松山には市内を走る路面電車 
があります。住んでいたころよく利用していた路面電車に、懐 
かしい気持ちもあって、久々にのってみることにしました。 

 道路上の駅で待っていると、威勢の良いクラクションととも 
に市内電車がやってきましたが、驚いたことに、見たこともな 
い新型車両になっていました。とにかく乗ってみると、社内は 
広く、ソファーは柔らかく、何より高齢者にやさしいノンステ 
ップの車両でした。新品の車両に「へーぇ、路面電車もついに 
新型を採用したか。」と少し感心しましたが、同時に何か物足 
りなさも感じました。 

乗り換えの駅で次に乗った車両は、かつて学生時代から市内を 
走っていた旧式のものでした。昭和初期に作られたようなその 
車両は、半分木造の随分古いもので、先ほどの新型車両とは対 
象的なつくりです。学生時代は、「ボロだなぁ、何とか新しい 
ものに出来ないのかな。」と思っていたものです。 

しかし、さっきのよう物足りなさはなく、むしろ「松山に帰っ 
てきたんだなぁ~。」と、学生時代の思い出や懐かしい感情が 
どんどん高まってきて、心地よい気分になりました。 

 ところがふと、新型車両とすれ違ったとき、近くに座ってい 
たご高齢のお二人が、「あの新しい電車のほうが、乗り降りは 
ラクだし、揺れは少ないし、乗りやすいんよ。あたしはあっち 
がいいよ。」と話しているのが聞こえました。 

新しい車両と古い車両の両方に乗り、やっぱり松山の路面電車 
は古いほうがいいな、と今しがた感じていただけに、複雑な気 
持ちになりました。 

 しかし考えてみれば、便利さや乗り心地という面では、当然 
新型車両のほうが優れていて、お年寄りの方々には、そちらの 
方が使いやすいでしょう。逆に私のように懐かしさや思い出に 
浸るのなら、古いほうがよいというのも当たり前の話です。 

 まちおこしに関しても、新しいものをどんどん取り入れてい 
る地域もありますし、一方で古いものを残そう、復活させよう 
という地域もあります。 

 今回の件で感じたことは、古いがよい、新しいがよいという 
ことでなく、それぞれに良さがある、ということでした。どち 
らが良いと決めつけず、よく考える必要があるのだなと思いま 
す。そうすれば、両方の良さを取り入れた、もっと良いものが 
できるかもしれません。古さと新しさは相反するもののようで 
すが、その価値を融合させることは不可能ではないはずです。 

 松山を去る前にもう一度、旧型の路面電車にのりました。例 
えばこの路面電車にしても、外観や内装のデザインは昔のもの 
を残しながら、内部設備や機能を最新のものにすることも、や 
ろうと思えばできるはず…と考えつつ、懐かしいまちを後にし 
ました。 (小林) 

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○今回の執筆者紹介 小林 祐司(こばやし ゆうじ) 

 某建設コンサルタント会社にて地質調査を担当していたが、 
調査中に環境問題意識に目覚めて退職し、インドに渡る。 
 インドではNGOのボランティア活動を通じて食糧問題へ 
の関心が高まり、帰国後生協に入社、地域密着の生協活動を 
担当。 
その後退職して船井総研入社。現在週刊まちおこし編集長。

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